最終章

明日、帰国します。

今から約６年前、留学を決断したあの大学２、３年の頃が、自分の人生のターニングポイントだったと思う。留学を決めてから、色々な人から“やめたほうがいいよ”とか、“絶対に無理だよ”と言われ続けた。とある留学経験者の英語の先生からも“絶対に留学をしないほうがいいよ。このまま大学を卒業して、日本で就職したほうがいいよ。それに、今の君が、わざわざアメリカで苦労する必要がないよ。”と言われた。その時、本当にショックだった。確かに、あの時点での英語力で、そして、このまま卒業して就職すれば、それなりの生活は保障されているものをあえて捨て、先の見えないアメリカに行くことは、自分でもナンセンスであることは納得していた。実は、この先生から言われたこの一言が自分を変えた。その瞬間から“いつか見返してやる”と心に誓った。

ずっと苦手だった英語もこの頃から本気に勉強しだした。中学の英語の成績はいつも２か３。今でも思うのだけど、高卒ですぐにアメリカの大学に入学している人たちを見るとすごいなと思う。そして英検３級レベルからの猛勉強。大晦日から新年が明ける瞬間も勉強したっけな。その時から、目標ができると、人間は変わるものだと知った。

留学を決心したのはいいけど、留学準備は一向に進まず一人悩んでいた。そんな時、留学から帰ってきたばかりのとある人に運命的な出会いをした。本当にこの人には感謝しています。留学経験者の話をなかなか聞くことができなかった中、これほど自分のために、親身になって相談に乗ってくれた人はいませんでした。この人からの一つ一つのアドバイスが、これからする留学がいかに大変なことかは容易に想像できた。もしこの人に出会わなければ、今の自分はないです。

留学するにあたって、留学準備が第一の難関。学校の選定とその資料請求、留学にかかる費用の計算からビザの取得、住居探しなど山ほどすることがある。留学の準備を進めたことがある人なら分かると思うけど、これだけを業者を通さず、自分１人で行うのは結構大変だ。情報源の少ない異国の地の学校を自分ひとりで決めるのには苦労した。留学手続きを、業者を通さず、自分一人で行ったのは留学経験者のアドバイスから。何もかも自分一人で行うのは大変だけど、あとから絶対に役に立つと教わった。

そして、留学を決心させたあの中国人留学生のドキュメンタリー番組との出会い。人生をかけて、努力している彼らの姿を見て、自分の置かれている立場のありがたみ、そして今までの悩みがいかに小さいことかに気づかされた。９９％は留学をすると決めていたけど、この番組を見て１００％留学すると決心した。そして、どんなことがあろうが途中であきらめずに、ベストを尽くすことを心に誓った。

それから月日が経ち、留学してから早３年。ついに卒業式を迎える日がやってきた。多くの日本人留学生がアメリカに来ている今の世の中、アメリカで卒業することは大変ですが、それほど難しいことではありません。けれど、この自分が異国の地のアメリカで、それも大学院を卒業できるとは、奇跡に近い出来事です。

なぜなら、留学して半年から１年、留学自体を断念せざる終えない状況に追い込まれていた時期があったからです。あの頃からの自分には、卒業式を迎える日がくることは、全く想像できなかった。それぐらい追い込まれていたし、苦しんでいた。“このまま、留学の負け組みの一人として日本に帰国し、みんなにこの無様な自分をさらけだすことになるんだろうな”と覚悟していた時もあった。留学の難しさに気づかされ、絶望をさまよっていた。また、１ヶ月後の自分が何をしているか全く分からない状況が、１年以上続いた。

そしてついに、約２０年思い続けたアメリカでの卒業。自分の人生のほとんどを、このために費やしてきた。このために色々我慢もした。今まで色々な夢があったけど、何一つ達成することができなかった。けれど、人生で初めて、自分の夢がかないました。本当にうれしいです。

これまでの留学を支えてくれた、家族、先生、友人のみなさんには、本当に感謝しています。皆さんの力が無ければ、今の自分はありません。本当にありがとうございます。

中国人留学生のドキュメンタリー番組でも言っていたように、“自分の国のことを知るには、国を出て初めて本当に知ることができる”と思います。そして、“人はふるさとを遠く離れ、ふるさとのことを思う。人は人と別れ、その人のことを思う。一度きりの人生。。。”

次の目標は、まずこれからの３年間、入社する企業で、どんなことがあろうが、この留学で培った不屈の精神 (Fortitude)で頑張りぬきます。学生では経験できない、“社会の洗礼”をどっぷり受けてきます。そして、自分のもう一つの大きな夢を実現するために、精進していきます。次の夢の１つでも、３０年から４０年で達成できればいいです。留学は次の夢の土台でしかありません。

英語で卒業式は“commencement”。その意味は、”開始、始め“です。卒業は人生のスタートだという発想からだそうです。自分の新しい人生がこれから始まります。

Sayonara, America.

１７日の午後１時５０分に中部国際空港に着きます。

MNS